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中国・包装材浸透(透過性)実験への疑義


まぁ例のメタミドホスなんですけど、今回の中国政府の発表はイヤになるくらい予想通りでした。そもそも日本の化学分析技術(科警研発表)を舐めてますよね。

確か、この国の右隣の北朝鮮とか云う山賊集団でも同様のことがありました。
Nature誌に載った日本の分析結果(めぐみさんの遺骨判定)に対する反証論文を、鬼の首を取ったように日本の捏造にすり替えてました。あれは誰かさんがわざわざ有り得ないような温度で焼いたりするから、そうした前処理をしたものの分析には断定するほどの信頼性があるのか?って言っただけの報告でした。寧ろ、あの論文は高温焼きの効用?にある意味お墨付きを与えただけで、北にとっての工作が逆説的に証明された一件でした。

それはさておき、今回の中国側の検証実験では、包装材(フィルム)への薬剤浸透性に関して、ご存じのように日本の分析結果と対立した判定が出たと・・・。
う~ん、どうなんでしょうね。
実験プロセスの詳細は「【記者ブログ】食の安全学再び:中国公安のいいぶん聞いてみる? 福島香織 (1/5ページ)」に書いてありますけど、私は、この実験スキームでフィルム浸透性が発現したとはとても思えませんでした。

ちょっと長くなりますけど、化学的に考えてみましょうか。
純メタミドホスの簡単な物性は以下の通りです。

------
METHAMIDOPHOS
O,S-Dimethyl phosphoramidothioate
Phosphoramidothioic acid, O,S-dimethyl ester
C2H8NO2PS

・分子量:141.1
・融点:44℃
・比重(水=1):1.3
・水への溶解性:よく溶ける
・蒸気圧:0.002 Pa(20℃)
国際化学物質安全性カードより)
------

融点から、常温では固体であるが、水に易溶なので簡単に液体化できる。
20℃における蒸気圧を観ても、極めて気化しにくい物質である(0.002Paは水銀柱に直すと約1.5×10のマイナス5乗 mmHg)。因みに水の同温における蒸気圧は約17.3 mmHgですので、この物質が如何に蒸散しにくい物質か分かります。

今度は包装材です。
一般に、冷凍食材用フィルムは単層フィルムではなくて、金属層を入れたラミネート(多層)構造の高分子(ポリマー)材料が使われます。大抵は内側をアルミ蒸着したポリプロピレン(PP)かポリエステル(PET)です。ただ調べてみると、JTの包装材はアルミ蒸着系ポリマーフィルムらしいのですが、生協のものは非蒸着系だったとかでよく分かりませんでした。ですから、両方について考えてみる必要があります。

さて、物質がフィルムを浸透・透過する場合の形態は大別して液体、気体の二つです。

ここでは、薬剤による腐食作用は除外して考えます。こういった相互作用が激しい場合は、大体は肉眼レベルで表面状態が変質しますので必ず所見中で述べられるはずですからね。

まず、液体であったのなら、浸透するためには、始めに包装材表側のポリマー表面にこの液体が”濡れる”必要があります。”濡れる”というのは、表面に馴染んで濡れ拡がることを意味します。この対極が”撥(はじ)く”と云えば分かりやすいと思います。もし、”撥いた”場合には、浸透現象が液体状態で生ずることはありません。

それで、この”濡れ”が起こるためには、液体の表面張力がフィルムのそれより小さくなる必要があります。有名なテフロンと云う商品名の物質がありますけど、あれは水を思いっきり撥きますよね。水の表面張力がテフロンのそれよりすごく大きいからです。テフロンの表面張力は非常に低く、油でさえ撥き、これを濡らす液体は通常ではほぼ有りません。

話しを戻しますと、メタミドホス水溶液はその易溶性や構造を考えれば、確実に高い表面張力をもっています(極性液体)。一方、相手の包装材の表層は上記のようにPPかPETです。純PPは低い表面張力をもっています。純PPの場合、メタミドホス水溶液をまず完全に撥くはずですから浸透することはないと観て良いでしょう。浸透の初期段階でブロックされます。

しかしながら、包装材の真の表面層は印刷層です。単に印刷してあるだけならば、その層材はインクになりますが、最近では先に印刷済のフィルムを貼り付ける(接着する)形式のようですから、そのフイルムの表面張力が問題となりますし、またPPに接着しやすくするためにPP表面をコロナ放電処理等で改質してある可能性(高表面張力化)も考えなくてはなりません。従って、包装材表層の表面張力がメタミドホス水溶液のそれを上回るケースならば、濡れてしまう、つまり浸透の初期段階が完了してしまう可能性があります。

ちょっと複雑になってしまいましたね。もっと単純に考えましょう。
例え、界面化学的な浸透の初期段階が完了し得たとしても、以下の理由で液体状態での浸透の可能性はほぼ無いと考えられます。

1.濡れがもし起こっても、それは最表面層だけの現象であり、更に内部(バルクと云います)にまで浸透することは、高分子フィルムのバルクにおける分子配列や表面張力値を考えると、先に述べた腐食でも生じない限り非常に考えにくい。

高分子には、その分子の動き(セグメント運動性)に凍結、非凍結の境目となる温度が存在します。それをガラス転移温度(Tg)と云いますが、周囲温度がTg以下になると、当該高分子を構成する分子や分子集団は凍結されて動けなくなります。ゴムや粘着剤が室温で柔らかいのは、それらを構成する高分子のTgが室温よりずっと低いところにあるからです。
ここで扱っているPPやPETのTgは、それぞれ約-10℃、約70℃にありますから、実験温度の-18℃ではどちらも分子鎖の運動は凍結されていると観て良いでしょう。従って、早い話がフィルム分子が動かないと云うことは周囲、すなわち薬剤との相互作用が非常に小さい、不活性な状態にあると云うことです。この場合には、液相薬剤分子(大きい)が凍結された分子鎖をすり抜けて(隙間が小さく、動かない)内部に到達する可能性はほぼありません。
ただし、正確に云いますと、高分子最表面のTgは通常のそれ(バルクTg)よりかなり低くなっていますので、-18℃でも最表面には薬剤が浸透する可能性はあります。しかし、この挙動によって浸透がバルクにまで到達することがないことは1.の通りです;3/3 補則

2.ラミネート内側(つまり食品側)にアルミ蒸着層があれば、そこでまた再濡れが起こっても、金属構造による非常に密な分子充填状態をもち、水蒸気でさえ透過しない層内を通って内側まで浸透することは、これまた非常に考えにくい。

3.そもそも、実験条件である-18℃と云う温度で、メタミドホス水溶液は当該溶質濃度が低いうちでは液体状態を保てず、固体となっている。固体であれば、浸透しない。

中国の実験では最高60%水溶液(質量モル濃度換算で約4.25 mol/l)までフォローしてますけど、水のモル凝固点降下が1.85℃(1モルの溶質が溶けているときの凝固点降下、単位;K・kg/mol)であることを考慮すると、最高濃度でも-18度まで凝固点が降下することはない。つまり、最高濃度でも固体である。
ただし、メタミドホスが水中でn分子解離していると、上の最高モル濃度は4.25xn mol/lとなり凝固点が-18℃以下に下がって、-18℃でも液体状態を保つ可能性があります。

それから他の材質条件ですけど、まずPETの場合、PPよりも高表面張力材料ですが、メタミドホス水溶液のそれより低い可能性は小さいこと(を上回る可能性は非常に小さいこと;3/3 修正)と、低温で脆性(脆い性質)が出るため、低温包装用途にはあまり使われないことを併せれば、これを使って浸透性が発現した可能性はほぼ除外しても良いでしょう。勿論、上のによっても否定できます。

そして、非蒸着系材料の場合もPPならば、上記、によって否定できますし、上記後者の理由で単独でPETを使うことはまず考えられないため、これも否定できます。

次に、気体状態での浸透(透過)ですが、上の20℃においてさえ極めて低い蒸気圧、さらに実験温度が-18℃であることを加味すれば、これはもう確実に透過して食品に付着することはないでしょうね。

と云うことで、考えられるほぼ全てのケースでメタミドホス水溶液が包装材を浸透・透過して食品にまで達することは無いと言えます。

一応、フォローのため、中国での実験で浸透があったケースを、意図的かどうかを予想して以下に書いておきます。

A.純品のメタミドホス以外、例えば、アセフェート(水に溶かすとメタミドホスを生成する)を実験に使った場合、不純物及び未反応物の内容や量によって腐食性や通常条件では発生しない特異的な触媒作用により浸透性が発現した。そして、腐食性による材料の変質や特殊な不純物の組成を隠しているケース(メタミドホスが軟鋼や銅を侵すという報告もあるようです)。

B.メタミドホスを浸透させるためだけに、包装材料に対して非常に強い相互作用をもつ溶媒(トリフルオロ酢酸のような強烈なポリマー溶解作用をもつもの)を使い、それを隠しているケース。

C.実験後、包装材内側から成分を拭き取る際に、ただの操作ミス或いは清浄管理不十分で材料表面のメタミドホスが混入したケース。

D.あとは上の方でも述べましたように、メタミドホス水溶液に対して、より親和性のある包装材を使って無理矢理浸透性を発現させた(例えばPETより”濡れ”の良いものとか)。

まぁこれくらいでしょうか。
どのみち、上記ならば、日本にバレた時点で終了です。
それ故、実験資料の詳細を出し渋るでしょうね。
現時点で、メタミドホスが中国国内で混入した可能性を相当な蓋然性をもって疑うのは、以下を見ても明らかです。

残留農薬違反事例検索結果(メタミドホス)・・・ブラジル、フィリピンを除いて、残りは全部中国です違反した国はもうひとつ、台湾もありました。それに上をクリックすると、不正アクセスとか何とか・・・ここから農薬”メタミドホス”で検索して右上の”違反事例”をご覧ください;3/2追記


それでもう一つ忘れてました。中国を擁護するわけではありませんけど、不純物成分が純品以外のメタミドホスで世界共通だろう、ってのには同意します。製法が同じなら、大抵は不純物や未反応物は似たようなものになるはずで、純品以外の当該商品を見分けるのは相当に困難であることは確かだと思います。
ただ、これが中国以外の第三国を犯人に仕立てるためのイヤらしい誘導であると観た福島香織記者の読みにも同意しますが・・・。

最後に、今回の中国側が行った発表の意図と云うか動機の裏に、切迫した経済的事情があることはこのエントリーの中でも最も確定的な要素でしょうね。
これについては、青木直人氏の最新エントリーをお読み下さい(毒入り餃子の経済学)。

更に最後に、「(中国側は)これからも日本と共同して、しっかり調査したいということを言っていたのではないか。非 常 に 前 向 き だ」とな・・・前向き・・・福田さん、冷静と云うよりも現実逃避でしょうね。

以上です。


附録:Supplement

毎日元気!」と云うブログのエントリー”包装材に対する不安 ”に、以下のことが述べられていました。

「今回問題のメタミドホス系のものは浸透力が強く、
包装材の外側に付着していても、内部まで浸透し
毒性が移ることがある。
過去にドイツ(だったはず)でパンを食べて、同様に
中毒症状が出て、原因を調べてみた。
ある運搬用トラックが農薬を運んだことがあり
そのトラックで運ばれた小麦粉を使ったパンがその時の中毒の元となる
パンであった。という症例もある。」

という内容・・・。

その話から、次は、ある機関が包装材の浸透性について実験を行ったという。
通常、問題になった中国製餃子の包装に使われているようなものは
水の浸透はしないが、メタミドホスのようなタイプのものは実際に
多くはないが浸透したことは事実。  だとか・・・


どこのワイドショーだったのかはちょっと分かりませんね。その専門家の言う前半のパン小麦の話しですけど、これと今回のケースを同列に見るべきでは無いと思います。
何故かと申しますと、メタミドホスは極性の強い物質ですから、浸透性も強いのはその通りですが、これは主に人間の皮膚のような親水性の多孔性表面に対する言葉です。一般に冷凍食品包装材のような疎水性表面には通常適用できません。
例にあるように、トラックで農薬と小麦が同居することで農薬成分が小麦に移ったのだとしたら、小麦の包装材が例えば紙のような高い吸水性の多孔性材料だった可能性が大です。尤も、その包装材の材質が書いてありませんので、何とも言えませんが・・・。
それと、後半の”ある機関”とはどこのことでしょうかね。この機関が行った検証実験の詳細を聞いてみたいです。
あっ、別にこのブログ主が怪しいと言っているわけではありませんので、誤解無きようお願いします。



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