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イラク高等法廷と極東国際軍事法廷の対比


フセイン元イラク大統領の死刑が確定したそうですね。実際に執行したら、フセイン支持のスンニ派あたりがまた激昂して治安が悪くなりそうです。

フセイン元大統領、死刑確定 執行は不透明

イラク政府のルバイエ国家治安顧問は26日、フセイン元大統領の控訴は棄却され、死刑判決が確定したと述べた。イラク高等法廷の規則によると、最終決定から30日以内に死刑は執行されることになるが、欧州各国の反対などで刑が執行されるかどうかは不透明だ。ロイター通信が伝えた。

イラク高等法廷は2審制。高等法廷の広報担当者は11月5日の死刑判決が確定したのかについて、ロイター通信に「そう思う」と答えた。

イラク高等法廷は旧フセイン政権の犯罪を裁くために設置された。1審では、1982年中部ドゥジャイル村で起きたイスラム教シーア派住民虐殺事件で住民ら148人を殺害した事件に関し、11月5日、人道に対する罪でフセイン元大統領ら旧政権幹部3人に死刑が言い渡された。


この裁判を行っているイラク高等法廷(バグダッド裁判とします)は、フセインを「人道に対する罪」で裁いてます。
人道に対する罪と云えば、極東国際軍事法廷(東京裁判)におけるC項(級)を思い出すのですが、この東京裁判とフセイン裁判を対比させてバグダッド裁判を批判する朝日等左派の矛盾を指摘しているブログがありました。ご存じ、「東アジア黙示録」のアネモネさまがizaで開設しておられる「憂国のシャングリラ」(【批判できる?】バグダッド裁判と東京人民裁判)です。
ここで以下のことを述べておられます。

東京人民裁判を認める者は、今回のバグダッド裁判を批判することは一切できない。

簡単に云えば、こういうことだと思います。
東京裁判を消極的ながらも認める立場の朝日等の左派は、取りも直さず事後法や罪刑法定主義からの逸脱を認める立場にもなる。ところが、バグダッド裁判はこれに反した裁判ではない。ゆえに、東京裁判を認める左派はバグダッド裁判を批判する資格がない。

確かにこれは仰るとおりだと思います。
実を云うと、筆者はこのバグダッド裁判を少しおかしいな?とは思いながらも、結果(死刑判決)は支持しています。同時に、東京裁判は戦勝国による集団リンチ以外の何者でもないとも思ってます。つまり東京裁判など認めない立場です。
筆者が少しおかしいなと思う根拠は、バグダッド裁判は表向きイラク自身の手による裁判であるが、その陰の主役は実は連合軍(主はアメリカ)であることが分かっているからです。

三年前にアムネスティ・インターナショナルは以下の見解を表明しています。



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イラク:協議なしに設置される法廷に疑問

アムネスティ・インターナショナルは、連合軍暫定当局(CPA)とイラク統治評議会に対し、イラクの市民社会と国際社会との事前協議なしにイラク特別法廷設置の決定がなされたことについて、懸念を表明した。 「我々は、法廷設置の提案は、国際社会や広範なイラクの市民社会、とりわけ法律専門家と人権団体と協議するべきだと要請し続けてきた」と、アムネスティ・インターナショナルは述べた。

「残念ながら、法廷の規程案は採択前に公表されなかった」 国際法の下、占領軍としてのCPAがイラク特別法廷の適用範囲を設定する権限を持っていることは、どう考えても疑問がある。アムネスティは、法廷が裁判手続きを進め、犯罪と罰を定義するためにイラクの刑法をそのまま適用するという情報について懸念している。イラクの刑法には、国際人権基準と合致しない点がいくつかある。

「とりわけ我々は、法廷の管轄権の中で、イラクの刑罰が死刑を適用していることに懸念を持っている」


この団体の主張はさておき、イラクの特別法廷が連合軍暫定当局(CPA)による(国際社会の)事前承諾無しの裁判として始まることを疑問視しています。実際に事前承諾が有ったのか無かったのかは見る立場により異なるので何とも云えませんが、連合国側が主導的に行ったことは確かでしょう。
とすると、バグダッド裁判を結果的に認めてしまう立場の筆者としては、連合国側の集団リンチである東京裁判も認めてしまわないと矛盾が生じるのではないかと思いました。
そう思っていた矢先に先のエントリーを見つけたわけです。

結果(死刑)だけを受け入れて裁判自体を認めないと強弁することも出来ます。そうすれば無理矢理に齟齬は解消されますけど、何やらSF講和条約の解釈みたいで左派の批判を受けそうです。
左派は二つの似通った事象を対比させて右派の主張の矛盾をつく手法をよく使います(例えば、南京事件と原爆被害における犠牲者数)。
筆者はこれを左派の好きなメソッドという言葉を皮肉って、勝手に「対比的詭弁メソッド」(笑)と呼んでますが、このメソッドの上手いところは最も重要である背景の異なる二つの事象を「似通った」と誤認識させることにあります。ここを冷静に判断できれば、この詭弁手法のおかしさに気付くのは割と簡単です。

ちょっと話が脱線してしまいました。
左派の批判の矛先は、兎にも角にもアメリカ(連合国側)です。おそらく、左派の言い分は上記の「主体は飽くまで連合国」に依拠するところが大きいのでしょうが、だからと云って「東京人民裁判を認める者は、今回のバグダッド裁判を批判することは一切できない」が揺らぐことはないでしょう。

でも、筆者の自己矛盾はどうしてくれよう。どうも自発的に「対比的詭弁メソッド」に嵌ったままです。そこで、二つの裁判における大元の背景を考えてみます。

筆者はイラク戦争をアメリカによる侵略的要素の強い戦争と考えてますが、一方の大東亜戦争は前段階の支那事変を考慮しても、イラク戦争ほど大義のない戦争だったとは考えてません。
また、バグダッド裁判の判決の根拠は「人道に対する罪」と云う国際犯罪的要素の濃い罪名ではありますけど、飽くまでそのベースはイラクの国内刑法であり、当然、これは事後法による遡及でもないわけです。一方の東京裁判の同根拠は云うまでもなく、これとは似ても似つかないものであったことは明白だと思っています。
ゆえに、この二つの事象に「対比的詭弁メソッド」は当て嵌まらないと自己完結できます。

バグダッド裁判はアメリカ(連合軍)の陰がちらつくものの、裁判自体は適正に行われたものであるから、その結果も受け入れることに何の齟齬もない。
斯くして、筆者の自己矛盾は瓦解しました。

要は「東京人民裁判を認める者は、今回のバグダッド裁判を批判することは一切できない」を言い換えて、「東京人民裁判を認めない者は、今回のバグダッド裁判を批判することができる」とも云えることを証明しただけでした。

こんな簡単なことを、小難しく考える私はバカなんだろうか?
左派の複雑化手法に付き合う暇はないってことで・・・次からは事象をもう少し単純化して考えるようにします。



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【批判できる?】バグダッド裁判と東京人民裁判 from 憂国のシャングリラ 2006/12/27 06:08 PM
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